「介護サービス事業者経営情報報告」概要について確認しておきましょう
2025年3月までに(ほぼ)全ての事業者に求められる「経営情報報告」
2024年度の法改正において義務付けられ、今年の3月までに第1回の対応が求められている「経営情報報告」。
対象外となるのは、1.当該会計年度に提供を行った介護サービスに係る費用の支給の対象となるサービスの対価として支払いを受けた金額が100万以下である者、2.災害その他都道府県知事に対し方向を行うことができないことにつき正当な理由がある者、ということからも、「ほぼ全ての介護事業者」が対象となる、と考えて差し支えないでしょう。
本ニュースレターでは新たに義務となった「経営情報報告」の概要についてあらためて確認してまいります。
「介護サービス事業者経営情報報告」その概要とは
では、早速、中身に移ってまいりましょう。
先ずはこのような制度が「義務」となった経緯及び目的、活用範囲についてです(2022年12月20日「介護保険制度の見直しに関する意見」からの抜粋。特に重要と思われるポイントは太字としています)。
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(財務状況等の見える化)
○ 介護サービス事業者について、
・介護サービス事業者の経営状況をもとに、国民に対して介護が置かれている現状・実態の理解の促進
・介護サービス事業者の経営状況の実態を踏まえた、効率的かつ持続可能な介護サービス提供体制の構築のための政策の検討
・物価上昇や災害、新興感染症等に当たり経営影響を踏まえた的確な支援策の検討
・実態を踏まえた介護従事者等の処遇の適正化に向けた検討
・介護報酬に関する基礎資料である介護事業実態調査の補完
に活用することが可能となるという観点から、経営情報を収集・把握することは重要である。
また、介護サービス事業者側も、マクロデータを自事業所の経営指標と比較することにと、経営課題の分析にも活用可能と考えられる。
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※2022年12月20日「介護保険制度の見直しに関する意見」より
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○ 医療法人の経営情報に係る検討状況も踏まえ、介護サービス事業者の経営状況を詳細に把握・分析し、介護保険制度に係る施策の検討等に活用できるよう、介護サービス事業者が財務諸表等の経営に係る情報を定期的に都道府県知事に届け出ることとし、社会福祉法人と同様に、厚生労働大臣が当該情報に係るデータベースを整備するとともに、介護サービス事業者から届け出られた個別の事業所の情報を公表するのではなく、属性等に応じてグルーピングした分析結果を公表することが適当である。その際、介護サービス事業者の事務負担等に十分に配慮する必要がある。
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※2022年12月20日「介護保険制度の見直しに関する意見」より
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○ また、介護サービス情報公表制度について、利用者の選択に資する情報提供という観点から、社会福祉法人や障害福祉サービス事業所が法令の規定により事業所等の財務状況を公表することとされていることを踏まえて、介護サービス事業者についても同様に財務状況を公表することが適当である。あわせて、介護分野においては、介護人材の確保を目指して累次の処遇改善等がなされているところ、介護サービス情報公表制度は利用者等のサービス選択において広く活用されており、各施設・事業所の従事者の情報について、現行においても職種別の従事者の数や従事者の経験年数等が公表されていることも踏まえ、一人当たりの賃金等についても公表の対象への追加を検討することが適当である。その際、設置主体や給与体系等の違いに配 2 慮することや、公表する情報に関係する個人が特定されることがないよう配慮した仕組みを検討することが適当である。
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※2022年12月20日「介護保険制度の見直しに関する意見」より
上記内容のもと、開示が求められる情報として、2024年8月2日時点においては大枠として下記4項目が定められました。ここでは一つひとつの項目の内容について確認を行います。
先ず、1つめの項目は、「事業所又は施設の名称、所在地その他の基本情報」についてです。
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事業所又は施設の名称、所在地その他の基本情報
(1) 事業所又は施設の名称
(2) 法人等の名称
(3) 法人番号
(4) 介護事業所番号
(5) 介護事業所で提供しているサービスの種類
(6) 法人等の会計年度末
(7) 法人等の採用している会計基準
(8) 消費税の経理方式
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※令和6年8月2日「介護保険最新情報」Vol.1,297より
つづいて2つめの項目、「事業所又は施設の収益及び費用の内容」についてです(※は任意記載項目)。
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事業所又は施設の収益及び費用の内容
(1) 介護事業収益 ※
1.うち施設介護料収益 ※ 2.うち居宅介護料収益 ※ 3.うち居宅介護支援介護料収益 ※ 4.うち保険外収益 ※
(2) 介護事業費用 ※
1.うち給与費
ア) うち給与 ※ イ) うち役員報酬 ※ ウ) うち退職給与引当金繰入 ※ エ) うち法定福利費 ※
2.うち業務委託費 ア) うち給食委託費 ※
3.うち減価償却費
4.うち水道光熱費
5.うちその他費用
ア) うち研修費 ※ イ) うち本部費 ※ ウ) うち車両費 ※ エ) うち控除対象外消費税等負担額 ※
(3) 事業外収益 ※
1.うち受取利息配当金 ※ 2.うち運営費補助金収益 ※ 3.うち施設整備補助金収益 ※ 4.うち寄付金 ※
(4) 事業外費用 ※
1.うち借入金利息 ※
(5) 特別収益 ※
(6) 特別費用 ※
(7) 法人税、住民税及び事業税負担額 ※
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※令和6年8月2日「介護保険最新情報」Vol.1,297より
つづいて3つめの項目、「事業所又は施設の職員の職種別人数その他の人員に関する事項」についてです(※は任意記載項目)。
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事業所又は施設の職員の職種別人数その他の人員に関する事項
(1) 次の職種ごとのその人数(常勤・非常勤別)
1. 管理者
2. 医師
3. 歯科医師
4. 薬剤師
5. 看護師
6. 准看護師
7. 介護職員(介護福祉士)
8. 理学療法士
9. 作業療法士
10. 言語聴覚士|計画作成担当者
11. 柔道整復師・あん摩マッサージ師
12. 生活相談員・支援相談員
13. 福祉用具専門相談員
14. 栄養士・管理栄養士
15. 調理員
16. 事務職員
17. その他の職員
18. 上記のうち介護支援専門員・計画作成担当者
19. 上記のうち訪問介護のサービス提供責任者
(2) (1)に掲げる職種ごとの給与及び賞与 ※
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※令和6年8月2日「介護保険最新情報」Vol.1,297より
最後に4つめの項目、「その他必要な事項」についてです。
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その他必要な事項
(1) 複数の介護サービス事業の有無
(2) 介護サービス事業以外の事業(医療・障害福祉サービス)の有無
(3) 医療における事業収益 ※
(4) 医療における延べ在院者数 ※
(5) 医療における外来患者数 ※
(6) 障害福祉サービスにおける事業収益 ※
(7) 障害福祉サービスにおける延べ利用者数 ※
(注) 第2 (6) のとおり、介護サービス以外の事業を行う事業者において、介護サービスとそれ以外の事業の収益又は費用を分けて報告ができない場合には、できる限り (3) 〜 (7) について報告されたい。
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※令和6年8月2日「介護保険最新情報」Vol.1,297より
どうせ「取り組まなければならないもの」であれば前向きに
以上、義務化された「経営情報報告」の概要について採り上げさせていただきました。
今回の制度新設、事業者から見ると今までは必要なかった業務が付加される(≒事務業務が増大する)ことになる訳ですので、本制度に対する疑問や不満の声が聞かれるのも或る意味、尤もなことなのかもしれません。
一方、「これを機会に部門別会計を推進し、経営マネジメントを向上させよう」という前向きな声もあがっているようです。私見ながら、どうせ取り組まなければならないものであれば「今回の制度をどのように自社に有効活用できるか」という視点から前向きに検討を進めた方が生産的だと言えるのではないでしょうか。
その意味でも下記リンク資料の内容にあらためて目を通しつつ、全体像を把握の上、是非、ポジティブに取り組まれることをおススメする次第です。
※引用元資料はこちら
↓
2022年12月20日「介護保険制度の見直しに関する意見(p28以降に記載されています)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001027165.pdf
「介護サービス事業者経営情報報告」詳細について(2024年8月2日「介護保険最新情報Vol.1,297」
https://www.mhlw.go.jp/content/001283875.pdf
「介護サービス事業者経営情報報告」Q&A(Vol.1)(2024年8月20日「介護保険最新情報Vol.1,305」
https://www.mhlw.go.jp/content/001291727.pdf
「介護サービス事業者経営情報報告」Q&A(Vol.1)(2024年8月20日「介護保険最新情報Vol.1,305」
https://www.mhlw.go.jp/content/001291727.pdf
「介護サービス事業者経営情報報告」Q&A(Vol.2)(2024年10月31日「介護保険最新情報Vol.1,325」
https://www.mhlw.go.jp/content/001324295.pdf
「介護サービス事業者経営情報報告」Q&A(Vol.3)(2024年12月25日「介護保険最新情報Vol.1,342」
https://www.mhlw.go.jp/content/001364839.pdf
(2025-01-29)